新潟大学大学院医歯学総合研究科微生物感染症学分野新潟大学微生物感染症学分野

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A群レンサ球菌(溶連菌)の病原因子の解析研究内容-3

A群レンサ球菌(溶連菌)の病原因子の解析

  1. A群レンサ球菌(溶連菌)の再発メカニズムの解析
     A群レンサ球菌は、赤血球に孔(穴)を開ける毒素群を産生し溶血させることから、溶血性レンサ球菌とも別称されます。多くの人には、溶連菌の略称で知られていると思います。A群レンサ球菌による主な感染症は、咽頭炎・扁桃炎になります。すなわち,咽(のど)の腫れや痛みを伴う発熱や咳を生じます。わが国でも、毎年10万~20万人もの患者が推計されている感染症です。
     現在のところは、抗菌剤がよく奏功していますが、年々、耐性菌が増加し、また抗生剤治療後にも繰り返し症状の再発する症例も多く報告されています(Ogawa, Terao et al, FEMS, 2011; Ogawa, Terao et al., Microb Pathog, 2011)。そこで、私たちは、A群レンサ球菌が抗菌剤の作用を逃れるメカニズムを解析しました。その結果,以下の3つの可能性が推察されました。
    1. 抗菌剤に対する耐性度が高い菌が存在する。
    2. バイオフィルム形成能力が高い菌が存在し、菌隗内部への抗菌剤到達を抑制している。
    3. 細胞侵入能力が高い菌が存在し、細胞浸透性の低い抗菌剤から逃れている。
    そして、上記の解析結果を基にして、実験室レベルでの除菌方法を提唱しました。
    1. ペニシリン系とマクロライド系の抗菌剤を組合わせて投与する。
    2. ヒト由来の抗菌ペプチドを添加し、バイオフィルムを阻害する。

  2. A群レンサ球菌の唾液成分との相互作用
     A群レンサ球菌は、唾液に覆われた口腔や咽頭粘膜に定着します。そこで,唾液成分の中に、A群レンサ球菌の付着を助ける分子が存在するのではないかと仮説を立てて、研究を進めました。その結果、唾液中のPRP分子が、A群レンサ球菌の細胞への付着を促進することが示されました(Murakami, Terao et al, J Biol Chem, 2012)。
     今後は、A群レンサ球菌に感染しやすいヒトと感染しにくいヒトの間に,PRP分子の量的な差異があるかを分析し,感染リスクのマーカーとできるか否かを調べたいと考えています。
  3. A群レンサ球菌の免疫回避のメカニズム
     A群レンサ球菌は、菌の表面に発現する分子群を利用して、体内に侵入します(Terao et al, Mol Microb, 2001; Terao et al, J Biol Chem, 2002; Terao et al, Infect Immun, 2002)。私たちは,侵入分子をワクチン抗原として、感染防御に利用できないかを調べてきました。その結果、一部の侵入分子は、動物実験で感染防御に働くことが示されました(Kawabata, Kunitomo, Terao et al, Infect Immun, 2001; Terao et al, J Infect Dis, 2005)。
     しかしながら、A群レンサ球菌のワクチンは実用化されていません。そこで,ヒト体内に侵入したA群レンサ球菌が、どのような動態を辿るかを解析いたしました。A群レンサ球菌は、ヒトに備わる自然免疫系の補体や好中球から、巧みに逃れることが明らかになりました(Terao et al, J Biol Chem, 2006; Terao et al, J Biol Chem, 2008)。

     今後は、A群レンサ球菌の免疫回避機構に影響されない感染防御の方法を考案したいと考えています。
    そのアイデアの一部は、上記『感染免疫現象のバイオイメージング解析』『微生物DNAのナノスケール解析』にて紹介しています。

上記の研究活動は、前任の大阪大学大学院歯学研究科 川端研究室で実施いたしました。

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